石川県小松市出身の夫と結婚したばかり端午の節句のころに、夫とその姉にふたり揃って、「ちまきって知ってる?中華ちまきじゃないんだぞ。関東の人はちまきと言ったら中華ちまきを食べるんでしょ?」なんて言われたことがありました。今回は、端午の節句から少し経ってしまいましたが、調べてみると意外と面白いちまきの地域性についてお届けします。
「地域の食文化を楽しむ暮らし」を提案する weave は、暮らしに根ざした食文化が今もなお色濃く残る石川県小松市を拠点に発信しているのですが、そんな小松の季節の味わいや暮らしの工夫で食文化を楽しむライフスタイルを、weave の編集長をしています瀬尾裕樹子(せのおゆきこ)が移住者だからこその目線で切り取り、この連載を通じてお届けしています。
小松のちまきは関西方面を中心に西日本で食べられている白くて甘いお団子が笹の葉に包まれたもの。そもそもわたしの地元は移住者でできたような神奈川県川崎市。両親ともに川崎出身でもないわたしの地元のちまきとは?なんて考えたこともありませんでしたが小さいときに中華ちまきを食べた記憶もなく、ではあのとき食べていた笹の葉に包まれた何かはどこの食文化だったのだろう…?と母に聞いてみました。
すると、「近所の山形出身のおばさんに教えてもらって毎年みんなでつくっていた、餅米のちまきだよ。きな粉と砂糖を混ぜたものをつけて」と教えてくれました。
確かに、笹の葉に包まれた”あの食べ物”は、きな粉をまぶしたおはぎのような味がしていたのを思い出しました。
川崎に居ながらにして山形のちまきで育っていたとは、
移住者でできたまち、川崎バンザイ!(笑)
調べてみると、北海道、東北、関東甲信、四国や九州の一部ではおこわが食べられるのが一般的だそうですが、そもそもそれは、都のあった京都奈良で食べられていたような白くて甘いお餅のちまきを食べる習慣がなかったからなのだとか。京都や奈良でちまきが食べられるようになったのは中国の風習に由来しているようですが、それが根付かなかった関東以北では端午の節句には子孫繁栄を意味する柏の葉でお餅を包む柏もちが定着したとのこと。
両親どちらも北関東の出身であるわたしの親戚の家では、気候の関係か柏の葉が採れないからとほうの葉で赤飯を包んで炊き上げる「つとっこ」という食べ物を旧暦の端午の節句に作って食べていましたが、母はそれを子どもながらに「かしわもち」と呼んで育ったと聞いたことがあります。地域によっては柏がほう葉だったりとちの木の葉であったりと、もはや何がどう変化したのかもよくわかりません(笑)。
ちまきにしろ柏餅にしろ、神事にお供えする「餅・餅米」を何かしら地域の葉っぱで包むことで意味を持たせた節句の食べ物とした、ということなのではないかと想像しているところです。
ここまで書いてみて、これって何かと似ているような…と思ったのが、以前、この連載でも取り上げた石川県南加賀地域の郷土料理でもある「柿の葉ずし」。
すしにせよ餅にせよ、日本人はかの昔から、葉っぱに何かを包んで食べるのが好きなのでしょうか。節句の食べ物も、その時期にたくさんつくって大勢でも食べられるよう、葉による抗菌作用や簡単に食べられるフィンガーフード性も期待されていたのかもしれませんね。
それでは今回はこの辺で。