11月初旬の蟹漁解禁で、今年も石川では蟹の季節がやってきました。結婚してからも含めて石川の方とお付き合いをはじめてから彼此10年以上になりますがその間、石川を離れて住んでいた時期も、この時期必ず相手の実家から届く蟹を一緒にいただいてきました。
それでもわたしがこのずわい蟹や香箱蟹をちゃんと食べたのなんてそれまでほとんどありませんでした。
だからこそ、石川に住むまでは一年に一度届く香箱蟹を毎年毎年、あれ…どうやって食べればいいんだっけ?と夫に聞いてばかり。でも、なかなかどうして、この細い足や甲羅の奥に潜む内子を残すことなく取り切る方法を知らずに食べることができるでしょうか。魚屋さんに行けば茹でてあって家での調理は必要としないはずなのに、香箱蟹は特に食べるためのリテラシーが求められる食材だと感じます。
それが…!
ここ数年、この香箱蟹の食べ方も、まあまあ板についてきたのです(自分で言うか、と笑ってください。笑)。
移住して3回目の冬、毎年1回送っていただく香箱蟹を食べてい頃よりも食べる機会も増え、多少は手慣れてきたと言うことでしょうか。
「地域の食文化を楽しむ暮らし」を提案する weave は、暮らしに根ざした食文化が今もなお色濃く残る石川県小松市を拠点に発信しているのですが、そんな小松の季節の味わいや暮らしの工夫で食文化を楽しむライフスタイルを、weave の編集長をしています瀬尾裕樹子(せのおゆきこ)が移住者だからこその目線で切り取り、この連載を通じてお届けしています。
夫直伝、香箱蟹はこう食べる
色々と、やり方はあるかもしれませんが、わたしが夫に教えてもらって身に付けた方法がこちら(夫も決して料理人や魚屋ではありませんのであしからず)。
まずは脚を甲羅から外す。甲羅から外子がついている部分を外す。ブドウの房のようになっている外子はひと房ずつ外し、箸を使って骨を折らないように外していく。甲羅を裏返しお尻側からパカっと開く。甲羅の内側にある肺を取り去り、身を出したら蟹の顎を落とし、そのうちがわにある内子まで全て外す。足は縦に割って身を出しやすいようにする。
差し当たりこんなところでしょうか。
これをさらに蟹面にするときは、一番太い関節の部分だけは縦に割らずにとっておいて、肩の部分を落として身を出しやすくし摺漕ぎで細い方から太い方に向かってニュルっと身を出す。それをそれまでに出した全ての身を甲羅に詰めて最後に縦に並べて出来上がり。
流石に家庭で食べるだけのときに面まで作りませんが、各自身を出すことに没頭する時間はこの時期のこの地域の食卓の風物詩とも言えるかもしれません。
一年分の蟹を味わい尽くす、「蟹を喰らう会」
そんな石川の蟹シーズンですが、それをさらに味わい尽くしたい…!と、先日、密かにごく近しい友人たちとともに『蟹を喰らう会』を催しました。料理人が料理に昇華させた蟹は、それはそれで美味しいですがどうしても高くなってしまいなかなか食べられません。そして、原価の高さからわたしたちに手が出るレストランや割烹料理店ではなかなかふんだんに使うというところまで使ってもらえません…。
だからこそ、自分たちで買ってきた蟹を原価同然の価格で思う存分食べたい。どうせなら、家庭で少ない人数で食べるときにはできないような食べ方もしたい…!と言うことで、わたしたちの蟹を喰らう会のメニューはこちら。
✔︎ 香箱蟹で蟹面をみんなで作る
香箱蟹をバラしておいてそれぞれにカッティングボードと摺漕ぎを用意し、みんなが集まってきたら焼き蟹を突きながら 1 人 1 面つくりました。出来栄えはそれぞれですが、それもまた、愛着。香箱は自分で身をとってこそ、味わいもまたひとしおです。
✔︎ ずわい蟹の炭火焼
待ってました…!ずわい蟹。この辺りでも魚屋さんに行けば1杯5000円以上くらいはしているずわい蟹。なかなか一般的に家庭で食べられるものではありません。が、それをしかも生で魚屋さんにお願いしておいて(通常魚屋さんでは全て茹でて販売しています)、そのまま炭火で焼きました。茹で蟹では味わえないなんとも絶妙な火入れ具合、炭火の香ばしさ。少々値段は張りますが、生で手に入れられる機会があればぜひやっていただきたい食べ方です。
✔︎ 蟹ごはん
炭火焼して身を外したずわい蟹の甲羅や脚で出汁をとり、グラグラと煮詰めたスープで炊くご飯。焚きがったら身を外した香箱蟹を混ぜ込むと、それはそれは濃厚な蟹ご飯になりました。
✔︎ 蟹汁
こちらもご飯と同じようにしてとった出汁に、ぶつ切りしたねぎやいちょう切りした大根を入れて味噌を合わせたいわゆる蟹汁。甲羅や脚をしっかりと炭火焼してあることでとっても香ばしく濃厚な蟹の汁になります。
この地域でも、海の近くの小学校では毎年給食に香箱蟹が出てきたりするところもあるそう。とはいえ、生蟹を使って焼き蟹をやるところまではなかなか漁港の近くに住んでいたりよっぽど蟹が好きなお家でなければしていない印象。
わたしたちも、今回、念願かなって焼き蟹を自分たちでしたわけですが、炭火の準備が少々面倒なのと、焼き蟹は身も多いずわい蟹でやるとなると香箱蟹に比べてお値段が張ると言うのが少しハードルは上がるものの、いわゆるBBQと大きく違うわけでもなく、ぜひまたやりたい、そう思えるくらいの満足感でした。
ずわい蟹も香箱蟹も両方一緒に味わえるのは 11 月〜 12 月の 2 ヶ月間のみ。
一年に一度のこの季節。ぜひ来年もまたやりたいものです。