雨の多い石川の一年の中で比較的お天気のいい5月。青空と新緑が心地よく感じられます。
今年はコロナ禍の外出が緩和されたこともあり、GW中には能登にも車通りが多く、たくさんの方がいらっしゃっていたようです。
皆様はどのようなGWをお過ごしになられたでしょうか。
5月に入ると能登では本格的に、田植えや畑の農作業が始まります。
僕が住んでいる柳田という地域は、能登の中でも唯一海に面していない内陸の集落です。
最近は田んぼも区画整備がされ、綺麗な四角い田んぼを田植え機で田植えをしていたり、整備化されていない田んぼでは農家の方がとても丁寧に手作業で田植えをしている姿を目にします。
そうした姿を見ると、小学生の頃の田植えを思い出し、どこかしらの懐かしさを感じるのは僕だけでしょうか。
今回は、農作業や仕事をしている人を見かけたときや仕事が進んだときに使える方言を紹介します!
“コラム”あいの風”では能登在住で、趣味の写真を通して能登の風景などを発信している又木が、 季節ごとの能登の暮らしを地域に根付いた方言に注目して紹介していきます。 言葉はその土地に住む人々や地域社会の歴史に積み重ねられた生活文化。 僕が切り撮った能登の風景とそれにまつわる方言や暮らしの様子をお楽しみください!
5月の方言”はかいく”
「はかいく」とは作業が進むこと。捗るの意味。
能登では、田畑をしている人に対して「はかやらしけ(農作業が進みましたね)」という挨拶言葉があります。
昔、田おこしをするときに稲の株を一つ一つ鍬で撃ち起こし、その作業1人分を「ヒトハカ」と言い、この「ハカ」が現在での「作業量」の意味合いに転じ、ハカが進むこと「捗る」という言葉になったそうです。
能登の他にも北海道や大阪、茨城などでも使われています。
”暮らしの中の身近な言葉”
この「はかいく」という言葉は、小さい頃から祖父母や父が使っていて僕自身も馴染みのある言葉です。
実家は農家なので、手伝いで畑作業をしていると近所の方が通りかかったときに「えらいはかいったがいね(すごく作業が進みましたね)」と声をかけられることがあります。
相手から声をかけられたらねぎらいの意味もありますが、「今日はまんではかいったわ~(今日はとても作業が進んだなぁ)」のように自分で使うこともあります。
例えば、僕も実家の畑の手伝いをしたりするのですが、1日でやる作業が午前中で終わったりすると「はかいったはかいった」と父は言っていました。
その他にも、ご飯が美味しくてたくさん食べたいときに、「まんでご飯がはかいくわ~(とてもご飯が進みますね)」のように言うこともあります。畑仕事をした後に食べるご飯はとても美味しくて多いときでご飯4杯食べるときがあります。
能登では仕事を手早く片付ける人を「はかやり」と呼ぶことがあります。
僕が子供の頃、畑仕事をしている祖父母を見ていても、大変な思いをしながらよくやるなぁと子供心ながらに思っていました。
収穫した野菜などは主に地元の直売所で販売をしていますが、いろんな方から「野菜おいしかったわいね」と言われることを祖母は嬉しそうにしています。
大変な作業でも、例えば鍬を打つような「はか」1つ1つの着実な前進が後に大きな喜びとなることを知っているのでしょう。
ぜひ皆さんも作業が良く進んだとき、ご飯が美味しいときなど「はかいった」と言ってみてはいかがでしょうか。
また、誰かが作業をしているときは「はかやらしけ」と挨拶言葉としても使ってみてください!
文・写真:又木実信