気がつけば北陸の厳しい冬も過ぎ、桜の花びらが知らせてくれる春の訪れ。
先日実家に寄った際に、家の納屋には今年もツバメが帰ってきて、チュピチュピと雛たちが元気よく
鳴いていました。
家の前に望む富山湾は、とても穏やかで海に反射された太陽の光がキラキラと輝いています。
少し遠く畑の方から草刈りのエンジンの音が、海からは寄せ返す穏やかな波の音が聞こえてきます。
こんな日にはゆっくり能登半島の海岸沿いをドライブするのがとても気持ちよいことでしょう。
今回は、そんな天気の良い日の海にぴったりな方言について紹介します!
“コラム”あいの風”では能登在住で、趣味の写真を通して能登の風景などを発信している又木が、 季節ごとの能登の暮らしを地域に根付いた方言に注目して紹介していきます。
言葉はその土地に住む人々や地域社会の歴史に積み重ねられた生活文化。
僕が切り撮った能登の風景とそれにまつわる方言や暮らしの様子をお楽しみください!
4 月の方言“のた”
“のた”とは波のこと。
「のた 」は副詞の「のたり」(=うねる状態、垂れる状態)や動詞の「のたる」(=這う、うねる)と関係があるとされており、方言の分布は、北陸、山形、山陰など日本海沿岸に見られるようです。
能登でも波のことをのたと言い、今でも波が立つと、「のたがある」、波が静かになると「のたがおさまった」と言うことがあります。
”春の海は平和そのもの”
“のた “と聞いて、聞き覚えのある言葉だと思う方がいるかもしれません。
与謝蕪村が詠んだ有名な句でこのようなものがあります。
『春の海 ひねもすのたり のたりかな』
これは、『うららかな春の日、海は波が緩やかにうねり、一日中のたりのたりと寄せては返している』という意味です。
穏やかな春の海の情景と、波が寄せては返す様がとても心地よく表現されていて、うとうとと気持ち
よく眠ってしまいそうな風景だと思うのは僕だけでしょうか。
蕪村は丹後地方の与謝の海でこの句を詠んだとされていますが、能登の海も今まさにこのような情景
が広がっていて、風や波も穏やかで暖かく、波の音や鳥たちの鳴き声が心地よく耳に聞こえてきます。
荒々しい冬の海とは真逆な、穏やかで優しい海が広がっています。
波の音が子守唄
そんな波の音には癒しの効果があることをご存知でしょうか。
実家に住んでいた頃は、海がすぐ近くだったので家族が寝静まった夜中でも、波の音が聞こえていま
した。
なかなか寝付けない時も、波の音を聞きながらいつの間にか眠っていたことを覚えています。
(台風の時など風が強い日は、ゴーゴーと海が唸り、今日は騒がしいぞと思うこともあります)
自然の音はとても心地よく聞こえますが、特に波の音は母親の胎内音に似ており、安心感を覚えリラ
ックスできるとも言われています。
海の青さにもリラックス効果があるとされていて、祖母はよく「海はいいぞ、海を見ていたら心が晴れ晴れする」と言っていました。
様々な表情を持つ海
今は少し海から離れた場所に住んでいますが、たまに海を見るととても穏やかな気持ちになります。
元気を出したい時、癒しが欲しい時、たまには海を見たり波の音に耳を傾けることも良いかもしれま
せん。
また、能登では海水浴やシュノーケリングはもちろん、サーフィンをすることもできたり、様々なマ
リンスポーツも楽しめます。
今年の夏は暑くなると言われていますが、ぜひ海へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
文・写真:又木実信