今年も夏がやってきました。北陸地域の今年の夏は例年以上に猛暑となりそうと天気予報で報道がされています。皆様熱中症などにお気を付けください!
毎年夏は実家の畑でスイカを育てていて、水不足もあり成長が例年より遅くなっていたのですが、最近まるまると大きくなってきて食べるのが楽しみです。
さて、今年の夏は「アツイ」とのことですが、能登の夏も「アツイ」です!
なぜなら、コロナ禍の中で中断されていた「祭り」が数年ぶりに復活するからです。
「町の外に出た人でも、お盆や正月に帰らなくても祭りには帰ってくる」と言われるほど、能登の人は祭り文化を大切にしています。
今回はそんな祭りの中で使われる言葉について紹介します。
“コラム”あいの風”では能登在住で、趣味の写真を通して能登の風景などを発信している又木が、 季節ごとの能登の暮らしを地域に根付いた方言に注目して紹介していきます。 言葉はその土地に住む人々や地域社会の歴史に積み重ねられた生活文化。 僕が切り撮った能登の風景とそれにまつわる方言や暮らしの様子をお楽しみください!
能登のキリコ祭り
能登の祭りの多くはキリコ祭りと呼ばれます。
キリコとは何か簡単に説明すると、神輿のような担ぎ棒のついた巨大な灯篭のことで、高さは地域によって異なりますが3m~15mほどの大きなものまであります。
キリコの役割は神輿の神様にお供して道中を照らす御神灯として、町の人たちでキリコを担ぎ町内を練り歩きます。能登の地域の中でも祭りの形態は様々ですが、これらを総称してキリコ祭りと呼びます。
祭りの季節は7月、僕が暮らす能登町のあばれ祭から始まり10月頃まで数多くのキリコ祭りが多くの地域で行われています。
7月の方言いやさかよっさい、さかよっさい
祭りには担ぎ手の動きを揃えるために祭囃子がつきもので、キリコ祭りでも太鼓や鐘の音が響きます。
そしてその祭囃子に呼応するように、担ぎ手たちの威勢よい掛け声とともにキリコが動く姿は迫力があり、その一体感が美しくもあります。
今回ご紹介する言葉は方言と言うよりかは、祭りの際の掛け声の1つ。いやさかと聞けばご存知の方もいるかと思いますが、その語源は繁栄を願う「弥栄」から来ています。キリコ祭りの中でも地域ごとで掛け声のリズムや言い回しは異なりますが、基本的にはこの「いやさか」がベースになっています。
祭りと能登の暮らし
キリコ祭りがいつから行われていたのか確かなことははっきりとされていませんが、江戸時代の文献に記録があり、その中では輪島市にある住吉神社の祭りが始まりとされています。そこから、能登の多くの地域に伝わり、時代の中で形を変えて今日まで伝わってきました。
ただ、少子高齢化の波もあり担ぎ手が不足しキリコが出せない地域やキリコに車輪をつけて行っている地域もあるなど存続が危ぶまれています。
冒頭でも少し触れましたが、能登の人たちは祭り文化をとても大切にしています。
能登は自然豊かな里山里海に囲まれ、昔から農業や漁業などの一次産業が主な地域。その土地で暮らす人々にとっては、祭りを通して神様に祈り豊作や大漁を願ってきました。
祭りの背景にはこの土地の生業を守ってきた人々の姿があり、自然の恵に感謝しながら神様をもてなす伝統が色濃く残っています。
人々の心を魅了する能登の様々な祭り
祭りは神事から始まったものですが、時の流れの中で現在では町の活性化にも寄与しています。
そこにあるのは自分たちが暮らす土地への思い。
土地に根ざした祭りを守ることは郷土の誇りにつながり、それが活力になるように思います。
「いやさかよっさい、さかよっさい」と祭囃子とともに威勢よく町に響く掛け声、その顔には喜びが溢れています。
暗いニュースが多い今だからこそ、祭りを楽しみ、盛り上げていきたいですね。
ぜひ、能登の祭りに触れてその魅力を体感してください。
文・写真:又木実信