夏の土用がはじまりました。2021年は7月19日〜8月6日だそうですが、やはり土用といえば、土用の丑の日。今年は7月28日。季節の変わり目とも言われる土用に、みなさんは何を食べますか?
今回は石川に来てはじめて知った、この時期に食べるどじょうについてお話ししたいと思います。
「地域の食文化を楽しむ暮らし」を提案する weave は、暮らしに根ざした食文化が今もなお色濃く残る石川県小松市を拠点に発信しているのですが、そんな小松の季節の味わいや暮らしの工夫で食文化を楽しむライフスタイルを、weave の編集長をしています瀬尾裕樹子(せのおゆきこ)が移住者だからこその目線で切り取り、この連載を通じてお届けしています。
関東出身のわたしにとって土用の丑の日といえば、うなぎ。浅草あたりでは「どぜう」と書いた看板をよく見かけますが、うちでどじょうが食卓にのぼったことはありませんでした。
ところが石川では串刺しでよく見かけるどじょうの蒲焼。なんなら土用でなくともスーパーでよく見かけますし、嫁ぎ先の実家ではお酒が好きな義父がつまみにしている光景も日々の食卓の中でよくあります。
実家に住んでいた頃に食べたことのなかったどじょう。
こちらでは身近な食材でもあり、土用になるとよりいっそう力を入れて販売しているどじょう。
やっぱり田んぼが多い地域で食べられてきた文化なのだろうか?と、気になり調べてみたところ…
金沢ではかつて、キリシタンが生活の糧とするためにとっては売って広めたのだとか。
日本各地を見ると、かつては至るところでどじょうをとって食べる文化がありました。
暮らしと密接で、繁殖力も高いこともあってか、どじょうを使った神事が今なお残る地域もあるそうです。
どじょうを食べる文化は東アジアでもベトナムや中国、朝鮮半島などのさまざまなところでも見受けられ、日本以外でも広い地域で民の暮らしの糧だったことが伺えます。
至るところで食べられていたどじょうですが、季節の風物詩としてだけでなく日々の暮らしの中でこんなにもあたりまえに食卓にのぼる地域は、現在、どれくらいのあるのでしょう。
こうしたどじょうを食す文化を知ってなお、石川というこの地域の食卓に季節性や郷土性の高さが感じられてなりません。
それはこの地域に育つひとたちのアイデンティティと言って過言ではないと思うのです。
どうかこの、地域に深く根ざした食文化が、うちの娘や孫の世代まで、受け継ぐことができますようにと願ってやみません。